安全域のパラダイムシフト - ホワイトニングで信じられていたことと現在の視点

 これまでの歯科医師が患者様に「ホワイトニングは安全ですか?」と聞かれ、答えるときによく使ったのが「ホワイトニング剤は米国FDAアメリカ食品医薬品局で承認されているから安心です」という「右にならえ、横断歩道みんなで渡れば怖くない」という論理です。これはいけません!特に、米国の基準というのはあってないようなものなので、根拠にはなりえない類のものです。硬くて融通が利かない!と言われますが日本の厚生労働省の方が例のエイズ事件で官僚が有罪になったことを受けて、非常に厳しくなっています。(国民の安全を守るというより官僚の責任回避とも見えなくはないですが・・・)

またこんなことを言うホワイトニングサロンの有名な方もいらっしゃいました。「ホワイトニングで用いる過酸化水素は生体内でも(たしかに肝臓で作られています)作られている物質なので、口からわずかばかり摂取したところで健康問題などというおおげさな問題点などにはならない」 これはウソです。

確かに肝臓において、過酸化水素は生成されますが、その先が全然違うのです。肝臓から生成された過酸化水素は最後まで!過酸化水素の姿のまま作用します。フリーラジカルではなくてオキシドールの極低濃度物質として作用するのです。

これに対して、ホワイトニング剤に入っている過酸化水素はフリーラジカルに分解し、歯の内部の着色物を酸化し分解することで色を消す作用を持ちます。このときホワイトニング剤はフリーラジカルとして体内へ摂取され、体の細胞も酸化する(=老化させる)のです。しかもフリーラジカルはその反応の速さと量的な分析が難しいことから、現在でもあまり科学的な評価ができていないということも事実です。

フリーラジカルに関し、フェアな表現をすると安全性も確立されていない半面、これまでのホワイトニング治療の歴史の中で取り立てて憂慮するような被害も報告されていないことから、人間が本来もっているスキャべンジャーと呼ばれる抵抗力とフリーラジカルはある程度拮抗しているのではないか、というが推測を立てることができます。


この図は、人間と他の動物で代表的な抗フリーラジカル物質としてのスカベンジャー(清掃屋)であるSOD(※)の体内濃度を調べたものです。すると、人間ンは動物たちよりも遥かにSOD濃度が高かったことがわかりました。そして、各々の寿命との違いを図のように印してみたところ、相関関係があることがわかったのです。すなわち、人間は他の動物たちよりもはるかにフリーラジカルに対する抵抗性が強く、結果として長い寿命をほこっていることがわかります。 人間と違い、他の動物たちはフリーラジカルからの攻撃力に脆く、外部からのこうした因子のせいで寿命が削られてゆくのです。違う表現をすると、人間はフリーラジカルともある程度上手に付き合っていても、即 命を失ったり、明らかに短命な人生になるわけではないというとこです。

考えてみれば、我々が生活している環境でフリーラジカルから逃れるということはできません。食品には化学添加物や農作物の残留農薬が含まれていますし、タバコなどの嗜好品はもちろん、主治医より服用を要請される薬の幾つはフリーラジカルです。また、夏にこんがり皮膚を焼く紫外線や、歯の治療において金属の補綴物を入れることは、体内にある活性酸素をフリーラジカルに変える触媒となりますので、間接的にフリーラジカルを増やすことになります。

そういう環境下でも、我々は平均的な80数歳という寿命を持っているわけです。すると、ホワイトニングによる悪影響は否定はできない、けれどもホワイトニングしたら寿命が縮むのか?という論理はほとんど現実的でありません。

私は、歯をホワイトニングして爽やかに美しく魅せるということは十分に人生において価値があると思います。実際に、私自身はもちろん、妻や息子や娘にもホワイトニングしていますし、親戚友人にもやっています。そして私の診療所を訪れる患者様に施術しています。そのときのも以上のことは正直にお話しています。そして治療させていただいております。

ただ、やはりどこかに歯止めは必要ではないか!と思っています。

そこで私は患者様が歯を白くさせたい!という願いや希望を妥協させないで素晴らしい白さを供給し、一方でこれまではそのために膨大な量のフリーラジカルを摂取させてきた(特に、ホームホワイトニング単独法では)施術法を見直し、ホワイトニングにかける時間を1/2~1/3に減らすことを提言しております。この提言には私のホワイトニングの師匠の先生も賛同され、ご自身のご講演でも私の考えを踏襲して述べられることは光栄です。

早く 楽に 安全に 白くなりたい を叶えます!

※SODについて詳細解説

体の中には過剰に発生した活性酸素・フリーラジカルを消去・除去する働きをする物質が備わっています。その主なもののなかにSOD スーパーオキシドジスムターゼという抗酸化酵素があります。SODは1969年に発見された酵素で、活性酸素・フリーラジカルの1つであるスパーオキシドを消去し、過酸化水素に変えます。SODは各組織の中に存在し、細胞中の活性酸素・フリーラジカル傷害を防いでいます。その量は、活性値として表され、各臓器によって含まれる量は異なります。最も、多く含まれる臓器は肝臓です。